調査報告 / パラグアイ・アルトパラナ県Yguazú

パラグアイ・Yguazúの大型データセンター建設と地下水・PFAS汚染リスクに関する調査報告

ARAICOとHIVEの事業計画、冷却方式、地下水と農業への影響を、確認された情報と今後の検証課題に分けて整理します。

1.3 GWARAICOの最終構想。既存の稼働容量ではありません
200 MWHIVEが公表したYguazúの施設規模
PFASリスクは使用物質と曝露経路により異なります
現時点で、ARAICOまたはHIVEによるYguazúのPFAS汚染が確認されたわけではありません。

本文中の汚染経路は、漏出等が実際に起きた場合の想定です。冷却方式や施設との距離だけで汚染を判断するものではありません。

1. はじめに

パラグアイ東部、Alto Paraná県のYguazú(イグアス)地区では、近年、大規模なデータセンター建設が進められている。

特に注目されるのが、米国企業ARAICOによる「Iguazú AI City」と、カナダ企業HIVE Digital Technologiesによるデータセンター事業である。

これらの施設は大量の電力を使用し、冷却方式によっては相当量の水や特殊な冷却液を必要とする。

地域住民にとって重要なのは、施設の経済効果だけでなく、冷却液や排水が地下水、農地、農作物、そして飲料水に与える影響である。

とりわけ、PFAS(有機フッ素化合物の一群)は、一部の物質が環境中で極めて分解されにくく、地下水や食品を通じて人体に取り込まれる可能性がある。

本報告では、これまでに確認した事業計画、冷却技術、海外での運営実績、地下水汚染の可能性、農作物への影響を整理する。

なお、現時点でARAICOまたはHIVEによるYguazúのPFAS汚染が確認されたわけではない。 本報告は、確認された事実と、将来起こり得る環境リスクを区別して検討するものである。

2. Yguazúで進む大型データセンター計画

2-1. ARAICO「Iguazú AI City」

ARAICOは米国で設立された企業で、パラグアイ出身のAlejandro Zuccolillo氏らが関わっている。

同社はYguazúに大規模AIデータセンターを建設する計画を進めている。

これまでに報じられた計画概要は以下のとおりである。

項目内容
事業者ARAICO
プロジェクトIguazú AI City
所在地Yguazú、Alto Paraná
初期設備規模約6MW
初期運用開始予定2026年12月頃
最終構想最大1.3GW
敷地面積約87ヘクタール
立地ANDEのYguazú変電所付近

1.3GWは1,300MWに相当する。これは単なるサーバー施設ではなく、地域の電力・水資源・土地利用に大きな影響を与え得る規模である。

ただし、1.3GWは最終構想であり、全設備の建設・稼働が確定したわけではない。

ARAICOの公式情報では、Iguazú AI Campusが同社の最初のAIキャンパスと位置づけられている。

現時点で、同社が他地域で同規模のデータセンターを長期間運営してきた実績は確認できていない。

これは直ちに安全性の問題を意味するものではないが、実際に設計・建設・運営を担当する専門企業の技術力や実績を確認する必要がある。

事業予定地と周辺の影響範囲を示すMADES資料の地図
周辺参考図ARAICO/Iguazú AI City周辺の参考図。MADES掲載のAlejandro Zuccolillo名義のRIMA(2026年、6頁)にある事業影響範囲図です。資料上の参考図であり、独自の地籍測量ではありません。HIVE Digitalの位置ピンを示す地図ではありません。
原資料(PDF)を確認

2-2. HIVE Digital Technologies

HIVEはカナダを拠点とするNASDAQ上場企業で、暗号資産マイニングおよびAI向け高性能計算事業を展開している。

同社はカナダ、スウェーデン、パラグアイなどでデータセンターを運営してきた実績がある。

Yguazúでは合計200MW規模の施設が稼働していると公表され、さらに追加設備の計画もある。

所在地として、次の住所がデータセンター関連情報に掲載されている。

Ruta Yguazú–Tavapy, 100905 Yguazú, Alto Paraná, Paraguay

ただし、正確な敷地境界や周辺住宅との距離は、地籍情報や環境影響評価書の位置図で確認する必要がある。

2026年8月の報道では、Yguazú施設の従業員数は約160人とされている。

また、HIVEはパラグアイ国内全体で約290人を雇用していると報じられている。

建設段階では約500人が従事したとの情報もあり、地域雇用への貢献が期待される一方、長期的な環境管理体制も重要になる。

関連資料:ARAICO公式情報 · MADES掲載RIMA · HIVEの操業発表

3. データセンターの冷却方式とPFAS

データセンターは大量の熱を発生させるため、効率的な冷却設備が不可欠である。

冷却方式には複数の種類があり、使用する冷却液によって環境リスクが大きく異なる。

冷却方式特徴PFASに関する懸念
空冷空気で機器を冷却冷却媒体由来のリスクは比較的小さい
水冷・密閉循環水やグリコールを循環一般に低いが添加剤の確認が必要
GPU直接液冷チップ付近に冷却液を循環冷却液の成分次第
炭化水素系液浸冷却特殊な油に機器を浸す油自体は通常PFASではない
フッ素系液浸冷却フッ素系液体を使用使用物質によってPFASリスクがある

ここで注意すべきなのは、液冷だからPFASを使用するとは限らないことである。

一般的な水冷設備では、水や水・グリコール混合液を使用することが多い。

この場合、冷却液そのものに大量のPFASが含まれる可能性は通常低い。

一方、液浸冷却の一部では、フッ素系の特殊液体が使用されることがある。

特に二相液浸冷却では、冷却液の蒸発と凝縮を利用するため、フッ素系化合物が使われる場合がある。

ただし、液浸冷却にも鉱物油や合成炭化水素を使用する方式があり、すべての液浸冷却をPFAS汚染の原因とみなすことはできない。

重要なのは、冷却方式の名称だけでなく、冷却液の製品名、化学成分、安全データシート、廃液処理方法を確認することである。

4. ARAICOの冷却方式に関する情報

2026年10月1日付のパラグアイ紙『Diario HOY』では、ARAICOのAlejandro Zuccolillo氏が冷却方式について説明したと報じられている。

説明によれば、冷却設備にはチラーを使用し、冷却水を閉回路で循環させる方式を採用する。

また、システム全体の循環水量は約40m³、すなわち40,000リットルと説明されている。

閉回路方式であれば、冷却水を継続的に大量排出する開放型システムとは異なり、水の消費や排水を抑えられる可能性がある。

しかし、チラーを使用することだけでは、GPUへの直接液冷なのか、冷水によって空気を冷却する方式なのかは判別できない。

さらに、将来的な設備拡張時にも同じ方式を維持するのか、液浸冷却などへ変更するのかについては、確認できていない。

環境影響評価に関する報道では、約20本の井戸から日量350m³の地下水を取水する計画も言及されている。

40m³は循環系統内の保有水量、350m³/日は取水計画量と考えられるため、数字が異なること自体は矛盾ではない。

ただし、取水した水の用途、蒸発量、排水量、排水先を明らかにする必要がある。

最終的に1.3GWまで拡張する場合、初期6MW設備の説明だけで全体の水利用を判断することはできない。

一般的なチラー設備の配管と冷却装置
参考画像一般的なデータセンターのチラー設備。ARAICOの実設備ではありません。

関連資料:Diario HOYの冷却方式に関する報道 · MADES掲載RIMA

5. HIVEの冷却方式と海外実績

HIVEはARAICOとは異なり、海外での運営実績を持つ。

これまでの公表資料では、Yguazúの第1フェーズに空冷設備、第2フェーズに水冷設備が採用されている。

第2フェーズでは、BitmainのS21+ Hydro ASICとHydro AntSpaceコンテナが導入されている。

また、ドライクーラー技術を利用していることも公表されている。

これは、外気を利用して循環冷却液の熱を放出する設備であり、条件によっては蒸発冷却方式より水の消費を抑えられる。

ただし、ASICの水冷方式とAI用GPUの冷却方式は同一とは限らない。

HIVEはスウェーデンのBoden施設について、NVIDIA GB300 GPUに対応したDirect-to-Chip液冷と空冷のハイブリッド方式への転換計画も公表している。

つまり、同社は液冷設備を導入・開発する事業者である。

一方、カナダやスウェーデンの施設について、HIVEが原因と確認されたPFASによる地下水汚染事故や大規模な水質汚染事故は、これまでの調査では見つかっていない。

しかし、公開報道で事故が確認できないことと、汚染が存在しないことが科学的に証明されていることは異なる。

各施設の水質検査結果、排水許可、行政による検査・処分記録を網羅的に確認したわけではないため、無事故を断定することはできない。

参考用のBitmain AntSpaceコンテナと設置作業員
参考画像Bitmainの水冷マイニング設備。HIVE現地設備の写真ではありません。

関連資料:HIVEの操業発表

6. Yguazúの地下水とグアラニー帯水層

Yguazúで特に重要なのは、住民の多くが市役所の手配する上水道を利用していることである。

そのため、飲料水の安全性を考える際には、各家庭の井戸だけでなく、公共水道の取水地点と取水深度が重要になる。

地下水は地表近くの浅い帯水層と、地下100m以上に存在する深い帯水層とで、水質や汚染への脆弱性が異なる場合がある。

仮に地表から20m程度の地下水が汚染されても、その汚染が必ず100m以上の深さまで到達するわけではない。

深い帯水層が厚い玄武岩などの低透水性地層によって覆われていれば、地表からの汚染が到達しにくい可能性がある。

しかし、地下水汚染が20mで止まるという一般的な保証はない。

岩盤に亀裂が存在したり、井戸の遮水構造が不十分だったりすると、浅い地下水が深い層へ移動する可能性がある。

また、井戸の掘削深度が100mであっても、実際にどの地層から水を取り込んでいるかは井戸の構造によって異なる。

グアラニー帯水層は南米の広大な地下水系であり、その一部は地表からの汚染に対して比較的保護されている。

ただし、Yguazúの公共水道が実際にグアラニー帯水層から取水しているのか、玄武岩中の別の帯水層を利用しているのかは確認が必要である。

また、地下水の流れる方向も重要である。

データセンターが市街地の地下水流の上流側にある場合、汚染物質が住宅地方面へ移動する可能性がある。

逆に、地下水が市街地から離れる方向へ流れていれば、影響を受ける範囲は異なる。

施設と市街地の距離が近いという理由だけで、街全体の地下水が汚染されるとは判断できない。

地下水の流向、地質構造、取水地点を調べる必要がある。

関連資料:EPAの環境情報

7. 農地への影響と農作物へのPFAS移行

地下水汚染が問題になるのは、飲料水への影響だけではない。

農家が汚染された地下水を灌漑に利用した場合、農作物にPFASが取り込まれる可能性がある。

PFASは土壌に付着するだけでなく、種類によっては植物の根から吸収され、茎、葉、果実などへ移動する。

そのため、収穫後に野菜を洗うだけでは、植物内部に取り込まれたPFASを完全に除去できない。

トマト

トマトでは、根や葉に比べて果実へのPFAS移行が小さい傾向が報告されている。

しかし、汚染水で栽培されたトマトの果実からPFASが検出された研究もある。

果実だから安全とは断定できない。

ナス

ナスも根からPFASを取り込む可能性がある。

ただし、果実に移行する量は、PFASの種類、土壌条件、灌漑水の濃度などによって異なる。

現時点では、Yguazú産のナスにPFASが蓄積しているという証拠はない。

じゃがいも

じゃがいもは地下で育つため、土壌中の汚染物質との接触が問題になる。

PFASの種類によっては可食部に移行する可能性がある。

皮をむくことで表面由来の汚染を減らせる場合はあるが、内部に取り込まれた物質まで除去できるとは限らない。

葉物野菜

葉物野菜では、種類によって葉へのPFAS蓄積が比較的大きくなる場合がある。

特に、長期間にわたり汚染された水で灌漑した場合は、土壌への蓄積と植物への移行の両方を考慮する必要がある。

なお、PFASが検出されたことと、実際に健康被害が発生することは同じではない。

健康リスクは、物質の種類、食品中の濃度、摂取量、摂取期間などに基づいて評価する必要がある。

関連資料:EPAの環境情報

8. 深い井戸の水が安全でも農業用水は別問題

Yguazúの公共水道が深い帯水層から取水し、浅い地下水と適切に遮断されている場合、住民の飲料水は比較的保護されている可能性がある。

しかし、農家が浅い井戸や河川の水を灌漑に利用していれば、別の経路で汚染が食品に移行する可能性がある。

例えば、次のような経路が考えられる。

  1. 冷却液などの漏出・不適切な排水
  2. 浅い地下水・河川・農地の汚染
  3. 汚染水を農業用水として利用
  4. 農作物の根からPFASを吸収
  5. トマト・ナス・じゃがいもなどの可食部へ移行
  6. 食品を通じた人間への長期的な曝露

PFASを含む冷却液などが実際に漏出した場合の想定経路。Yguazúで発生したことを示すものではない。

このように、飲料水が安全でも、農業用水が汚染されれば食品を通じた曝露が起こり得る。

ただし、Yguazúの農地で実際にどの程度地下水を灌漑に使用しているのか、データセンター周辺の地下水がどの方向に流れているのかは、まだ確認できていない。

9. PFAS汚染が発生した場合の長期的な問題

PFASが環境問題として注目される最大の理由は、一部の物質が極めて分解されにくいことである。

PFOSやPFOAなどは、環境中に長期間残留し、地下水を通じて移動する可能性がある。

PFASの種類によっては、人体への長期的な曝露が健康上の問題と関連することも報告されている。

特に問題となるのは、汚染が確認されても、地下水や土壌からPFASを完全に除去することが容易ではない点である。

地下水の浄化には、活性炭、イオン交換樹脂、逆浸透膜などの処理技術が利用されるが、設備費用や維持管理費用が必要になる。

また、除去したPFASを含む吸着材や濃縮廃液の適切な処理も必要である。汚染が広範囲に及べば、対策が長期化する可能性がある。

ただし、すべてのPFASが同じ毒性、移動性、蓄積性を持つわけではない。健康影響については、個々の物質ごとに評価する必要がある。

関連資料:EPAの水処理情報

10. データセンター事業者に求めるべき情報

地域住民の安全を確認するためには、事業者の自主的な説明だけでなく、検証可能な技術資料の公開が重要である。

特に次の情報を確認する必要がある。

冷却方式の詳細

空冷、水冷、GPU直接液冷、液浸冷却のどれを採用するのか。初期設備だけでなく、将来の拡張段階で採用する方式についても説明が必要である。

冷却液の化学成分

使用する製品名、メーカー、安全データシート、CAS番号、PFASの含有状況を確認する必要がある。

水の使用量と排水経路

地下水の取水量、循環水量、補給水量、蒸発量、排水量を区別し、排水先や処理方法を明らかにする必要がある。

地下水の監視体制

施設の稼働前に地下水の水質を測定し、稼働後も継続して検査することが望ましい。

将来の設備変更時の環境審査

初期段階で水系冷却を採用していても、将来的にフッ素系液体を使用する冷却方式へ変更する可能性は否定できない。

そのため、冷却液の種類や冷却方式を変更する場合に、追加の環境審査と情報公開が必要になる仕組みを確認することが重要である。

11. Yguazú市役所と環境省に確認すべき事項

Yguazúでは、市役所が手配する上水道を利用する住民が多い。したがって、公共水道の安全性を確認することが優先課題となる。

市役所や水道管理者には、次の情報を確認することが望ましい。

  • 上水道の取水井戸の所在地と本数
  • 各井戸の深さと実際の取水区間
  • 取水している帯水層の名称
  • 井戸の遮水構造と地質調査結果
  • PFASを含む水質検査の実施状況
  • データセンター周辺の地下水流向

また、パラグアイ環境省MADESには、ARAICOやHIVEの環境影響評価書、取水許可、排水管理計画、環境監視計画などについて情報公開を求めることが考えられる。

特に重要なのは、施設が稼働する前の地下水の状態を記録することである。

稼働前のPFAS濃度が分からなければ、将来PFASが検出された場合に、それが施設の稼働前から存在したものなのか、稼働後に増加したものなのかを判断することが難しくなる。

ただし、稼働前後の濃度変化だけで汚染源を特定できるとは限らない。必要に応じて地下水流向、化学物質の組成、他の汚染源なども調査する必要がある。

12. 結論

Yguazúで進む大型データセンター建設は、地域の雇用や経済活動に貢献する可能性がある一方、地下水利用や冷却設備の環境管理について十分な検証が必要な事業でもある。

ARAICOは閉回路式のチラー冷却を採用すると説明しているが、GPUへの直接液冷や将来の冷却方式については不明な点が残る。

HIVEは海外での運営実績を持ち、Yguazúでは水冷ASIC設備を採用している。しかし、冷却液の詳細な成分や地域の地下水監視結果については、さらに確認が必要である。

現時点で両社によるPFAS汚染が確認されたわけではない。

また、地下100m以上の深い帯水層が適切な地層によって保護されている場合、浅い地下水の汚染がそのまま飲料水に及ぶとは限らない。

一方、農業用の浅い井戸や河川が汚染された場合、農作物を通じたPFAS曝露という別の問題が生じる可能性がある。

そのため、飲料水だけでなく、農業用水、土壌、農作物を含めた総合的な環境監視が必要である。

最も重要なのは、汚染が発生したことを確認してから対策するのではなく、稼働前に水質の基準となるデータを取得し、冷却液の化学成分と排水管理方法を公開させることである。

Yguazúの住民が求めるべきなのは、事業そのものへの賛否を決める前に、科学的な資料に基づいて環境への影響を検証できる状態を整えることである。

大型データセンターが地域と長期的に共存するためには、事業者、行政、住民の間で透明性の高い情報共有と継続的な監視体制を確立することが不可欠である。

参考資料・掲載範囲

本記事は、提供原稿と続稿に含まれる2026年10月18日までの公表情報・技術的知見を整理したものです。事業規模、運用状況、従業員数には事業者発表や報道に基づく数値が含まれます。個々の環境許可書、井戸の地質柱状図、冷却液のSDS、実測水質データを網羅的に照合した正式な環境影響評価ではありません。計画・日程は変更される場合があります。関連リンクは各記述を一括して保証するものではありません。設備写真は提供された参考画像であり、各事業の導入設備を立証するものではありません。

個別の環境資料・許可はMADES等の担当機関に確認してください。他事業者の環境資料をARAICOやHIVEの資料として扱わないよう注意が必要です。

検証できる情報と、継続的な環境監視を。

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